【コラム】by マササ・イトウ Vol.3 ホイバーグのオフェンスコンセプトについて

ホイバーグコーチの戦術はサマーリーグではほとんど披露されなかった1ようで残念でしたが、ブルズが今後どのようなチームになっていくのか個人的に注目しています。今回は、アイオワ州立大学時代に発売されたDVD2から、コーチのコンセプトの一部を紹介して、今シーズンのブルズにどう展開されそうか考えてみました。

ホイバーグのオフェンスコンセプト「敵がディフェンスを整える前に点を取る」

ホイバーグは速攻(プライマリブレイク)について「ディフェンスが準備を整える前に速攻で攻めることがコンセプトで、そのためには適切なスペースが必要」と説明します。(筆者要約)

以下、具体的に見ていきます。

①ビッグマンがリムに走りこみ、ウィングはスリーを狙う

  • 1番がウィングにボールを出し、4番(または5番。リバウンドを取らなかった方の選手)はリムまで走ります。

  • 毎回リムまで走りこむことで得点を狙い、そのことにより、ウィングのスリーポイントを打たせやすくします。

これによりアイオワ州立大学はトランジションでのスリーポイントを多く決めており、コーチ就任の10-11年シーズン以来、スリーポイント成功数を大幅に伸ばしたようです。3

アイオワ州立大学のスリーポイント成功数
シーズン 3pt成功数 ディビジョンI順位
09-10 6.5本 133位 / 347校
10-11 8.6本 13位 / 346校
11-12 8.9本 7位 / 344校
12-13 9.8本 1位 / 347校
13-14 8.3本 23位 / 351校
14-15 7.8本 41位 / 351校

②スペースを保ってオープンを作り出す

  • リムランによる得点がうまくいかなかった場合には、2番3番ともにコーナーまで進み、また、4番もベースライン沿いの脇に動きます。

  • 1番がディフェンスを何かしらの形で振り切った場合、5番を除く誰かがオープンでシュートを打つことが狙いです。

ホイバーグコーチはこのルールの理由についても解説しています。

  • 1番がディフェンスを振り切った場合、3番がコーナーではなく45度にいると、3番のディフェンスは1番にスタント4することでどちらも守れてしまいます。

  • 4番がベースラインに移動しなかった場合も同様に1人で2人を守ることが容易になってしまいます。

ここまでが基本コンセプトですが、実はこれはNBAでもオフェンスが強いとされているチームに共通するポイントで、ウォリアーズ、クリッパーズ、マブスなどで守られていることです。このことからも、ここ数年ディフェンス重視型だったブルズが超攻撃的なチームになる予感がします。

今後のみどころ
やはり気になるのは、ビッグマンが走るという戦術がそのまま採用できるのか、という点です。昨シーズン、トランジション(速攻や早い段階でのオフェンス)の攻撃頻度5は、ノア6.3%、ギブソン5.4%、ガソル4.9%とリーグ屈指の低さでした。ドレイモンド・グリーンが18.2%(!)であることからもチーム戦術の差が伺えます。

コーチがそのままノア、ガソル、ギブソンを走らせるのか、ミロティッチやポーティスといった若いベンチプレーヤーを積極的に走らせるのか、マクダーモットやスネルを4番として起用するスモールラインナップで走らせるのか、いくつかの選択肢が考えられますが、個人的には難しいかもしれませんが①②を組み合わせて、スタメン、ベンチの全員が走るようなチームになると面白いのではないかと思っています。これまでのスタメン重視型から出場時間を大きく変更することになり、大変革と言えるようなチーム作りがなされることを期待しています。

多彩な戦術を持つホイバーグコーチがどんな戦術を見せてくれるのか、また各選手の出場時間をどう調整してくるのか、プレシーズンマッチから更に注目していきたいと思います。また、いくつか面白いセットもありましたので次の機会に紹介できればと考えています。

マササ・イトウ


  1. Summer league team hasn’t scratched surface of Fred Hoiberg’s offense | By K.C. Johnson – Chicago Tribune

  2. Fred Hoiberg: Transition Basketball with Six Secondary Break Sets

  3. ESPNより。直近で数値が減っているのは、タイラス・マギーが抜けたことが大きそうですが、コンセプトの微妙な変化もあるのかもしれません。

  4. ヘルプディフェンスのフェイクのような守り方。ドライブを防ぎつつ、マークしていた選手へのクローズアウトも行える。
    http://bfij.net/2014/09/26/column-ma_sa_san-2/#stunt

  5. その選手がシュート、フリースロー、ターンオーバーで終わらせたプレー総数に占める割合。NBA.com/statsより

2 コメント

  1. ガソルが20代ならば有効かもしれませんが、今年で35になるために、スタミナ面で不安が残りますね。管理人さんが書かれているようにミロティッチなどを有効活用すれば面白くなるかもしれませんが。

    ただ、今までの単調なOFでは限界が来てたので来シーズンは結果はどうであれ、変化に期待できそうですね。キャブスの対抗馬として期待したいです!

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