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【コラム】by マササ・イトウ Vol.2 リーグのボールスクリーンへのディフェンスについて

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リーグのボールスクリーンへのディフェンスについて

前回はブルズのボールスクリーンへのディフェンスを大まかに紹介しました。今回は、ペイサーズをメインに全チームを大まかに調べましたのでまとめてみます。

ペイサーズのボールスクリーンディフェンス

まずはリーグ最強ディフェンスのペイサーズとブルズを比較してみました。3つのコンセプトは前回紹介したブルズのものです。

1. Push/Ice(一方のサイドを使わせる)
 ⇒そこまで積極的ではない

  • シボドーコーチが「出来る限り中央から離れた場所でプレイさせる」とコメントしていたのに対し、ボーゲルコーチは自チームについてそれを明確に否定します。ここでは自チームのことを「ボールが中央、ウィング、コーナーのどこにあっても、ボールに対してバスケットとの間に入ってまっすぐ対峙するチーム」と表現しています。

  • ブルズのようなスクリーンを使わせないプッシュやアイスをやっていないことを確認することは難しいのですが、有名なペイサーズのファンサイトでも、あまり使われていないことが記されています。
  • ブルズよりも身体能力に優れた選手(ヒル、スティーブンソン、ジョージ)が揃っているので、スクリーンを使われたとしても、追いついて守りきることができると考えているのかもしれません。

2. Soft / Zone up(ミドルを打たせる)
 ⇒コンセプトは同じだが、微妙に違う

  • ヒバートとマヒンミはブルズ同様にペイントに下がっていきます。ブルズ同様にペイントへのドライブまたはパスを警戒していることがわかります。

    hibbert2a

  • ただ、ノアがシュートに向かっていったブルズに対し、ペイサーズではボールディフェンスがスクリーンに大きくかかるなどして間に合わない場合に、ヒバートとマヒンミが向かっているように見えます。
  • 基本的にはシュートに向かわずにリバウンドに備えます。

    hibber-3a
    hibbert4a

  • ボールディフェンスが間に合わなそうであればシュートに向かう場合があります。

    hibbert5a

  • ペイサーズとブルズのどちらもペイントを警戒するためにミドルシュートが打たれやすい状態になりますが、ブルズはビッグマンのヘルプが前提、ペイサーズはボールディフェンスが追いつくことが前提となっているように見えます。手が長くて動きの早いジョージ・ヒルやポール・ジョージだからこそ取れる戦術なのかもしれません。
  • また、もう一つの大きな違いとしては、デビッド・ウェストは下がらずにショウディフェンス(相手にユニフォームの番号を見せるようにドリブルの進行方向に出ていく守り方)を行います。

    west1a
    west2a

  • ちなみに、シーズン当初はスコラもコープランドもウェストと同じディフェンスでしたが、プレイオフにかけて下がるようになっています。またウェストが上がった場合にはヒバートがペイントをカバーするように守っています。

3. Two men game(2人で守り切る)
 ⇒同じ

  • 先ほどのインタビューでボーゲルは「練習を5人でやるのか」という質問に対し「2対2がメイン」だと答えています。「2人で守りきることが基本で、残りの3人は、サポート(ヘルプ)を最低限に留めてシューターにつく」と明言しています。つまりこれは、ブルズと同じコンセプトです。


  • このジョージの動きは、前回紹介したスネルの動きと同じです。これは「スタント」と呼ばれているもので、ブルズ、ペイサーズ、グリズリーズなどでよく見られます。
  • また、ペイサーズもブルズと同様にスモールラインナップをほとんど取らないチームです。これは上記のような2人で守りきるディフェンスを実行するための必須条件のように見えます。

どうでしょうか。ここまで確認すると、ブルズとペイサーズでこだわっているポイントは異なるものの、ペイントとシューターのスリーポイントに優先順位を置いているという点で共通していることがわかります。

リーグ全体の傾向

ペイサーズと同様に全チーム数試合ずつ確認してみました。その結果、上記の2(特にセンターの選手が下がってペイントを優先して守り、ミドルシュートを多く打たせる)は半数以上のチームが採用していました。

下の図は、このようなチームを赤色、そうでもないチームを青色で示したものです。横軸は敵チームがミドルシュートを打った割合、縦軸は敵チームがミドルシュートを決めた割合で、右下に行くほど、敵チームにミドルシュートをたくさん打たせてその成功確率も悪かったということになります。(注:数試合しか確認していないチームもあるので、赤と青は間違っている可能性があります。)

Opponent mid-range FGA% vs FG%

chart01

これを見るとブルズやペイサーズはそのコンセプト、戦術が明らかに結果に表れているように見えます。また、敵チームにミドルシュートを多く打たせたチームはブルズと同じような守り方を採用している傾向があるようにも見えます。

このようなディフェンスに対して、効率の悪いミドルシュートを極力減らしていくようなオフェンスの傾向もあるようです。下の図は2001-02年シーズンからのリーグ全体のミドルシュートとスリーポイントの割合の変化を示したものです。

ミドルシュートが減少しスリーポイントが増加しているのですが、シボドーコーチがブルズで新たなディフェンスを披露したシーズン(2011-12年)から、大幅にその傾向が強まっていることは、単なる偶然ではないのではないか、そんな風にも思えます。

% of Mid-range & 3-point attempt

chart02

このような傾向から今シーズンの展望を予想したり、戦術を変更してきたチームを探したりするのも面白いかもしれません。私も、ブルズがプレイオフで敗れた結果や、新たな戦力を踏まえて、ディフェンスをどのように変えていくのか楽しみにしています。

マササ・イトウ

(データはすべてNBA.comより)

7 Comments

  1. BRC

    マササ・イトウさん
    管理人さん

    とても参考になりました!!
    バスケIQも高まりますし、今後NBA見るときもより楽しみになりました。

    ありがとうございました!!
    また宜しくお願いします(^_^)

  2. kazuya

    いやぁ、素晴らしいです。自身のプレイにも影響しそうですね(^^)

  3. IT25

    素晴らしい記事をありがとうございます。
    3Pは博打的な効率の悪いシュートなんて言われてた時代もあったのにここ数年で大きく変わったもんですね。
    もちろんパーカーなどロング2を決めきれる選手がいればDFの対応も変わるんでしょうけど…
    そういえばアメリカ人はダンクと3Pばかり練習してミッドレンジが苦手と誰かが言ってました。
    このDF哲学の普及で今後はそこを主戦場にする選手が活躍する時代になるかも?

  4. slyme

    素晴らしい記事をありがとうございます!
    ディフェンスの基本コンセプトがよくわかる内容で、脱帽です。
    私もブルズファンで、ジョーダンやピッペン、グラントがいたころは得点で「ねじ伏せる」イメージでしたが、
    今のブルズは「守りきる」イメージですよね。
    もちろん、どのブルズも最高なのですが!

    次の記事も期待しています!!!

  5. guchie

    すいません。
    「ブルー」というスクリーンディフェンスは、どういうものでしょうか?
    ご存知でしたら、教えてください。

    • BFiJ

      guchieさん、コメントありがとうございます。
      ブルーはマササさんが説明されているアイスと同じでピック&ロールをサイドやベースラインに追い込ませる手法です。呼び方が色々あるだけで内容は一緒だと思っていいと思います。

  6. guchie

    ありがとうございます。
    そうかなとは思っていたのですが、英語に自信がなく…。
    すっきりしました。

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